『大往生したけりゃ医療とかかわるな』


『大往生したけりゃ医療とかかわるな』 (幻冬舎新書)
中村 仁一
幻冬舎 2012-01-28

数年前のベストセラー本です。
TVやラジオでも取り上げられていました。
私も読みました。

著者の中村仁一さんは72才(当時)、現役の医師です。
長年、老人ホームに勤務してきたので、年を取って死んでいく場面に数多く立ち会いました。

そして、15年前から「自分の死を考える集い」を始めました。
この本では、寿命のきたお年寄りに対する、過剰医療、人工延命の問題点についての考え方をまとめてあります。

中村先生が考える「医療の鉄則」です。

1.死にゆく自然の過程を邪魔しない。
1.死にゆく人間に無用の苦痛を与えてはならない。

日本人の医療に対する期待にはスゴイです。

・治療に関する思い込み度テスト
(信頼度テストともいう)

1.ちょっと具合が悪くなると、すぐ医者にかかる。
2.薬を飲まないと病気はよくならない。
3.病名がつかないと不安。
4.医者にかかった以上、薬をもらわないと気が済まない。
5.医者は病気のことなら何でもわかる。

6.病気は注射を打った方が早くよくなる。
7.よく検査をするのは熱心ないい医者だ。
8.医者にあれこれ質問するのは失礼だ。
9.医者はプロだから、自分に一番いい治療法を教えてくれるはず。
10.大病院ほど信頼できる医者がたくさんいる。

11.入院するなら大病院、大学病院の方が安心できる。
12.外科の教授は手術がうまい。
13.マスコミに登場する医者は名医だ。
14.医学博士は腕がいい。
15.リハビリはすればするほど効果が出る。

どうですか?あなたはいくつ思い当たりますか?
私は3.と15.でした。

最近はほとんど病院に行っていません。

去年は歯医者が一回、アレルギー外来(花粉症)が一回でした。虫歯が出来たのでそのうち歯医者に行こうかと思います。

中村先生は、若いときと年を取ってからは、医療にかかる考え方が違うと言います。
年を取ってからは、なるべく穏やかに死を迎える工夫をすることが大切だそうです。

たとえば、ガン検診の早期発見・早期治療は必要ありません。
中村先生はガン検診を受けないように努力しているそうです。
私も同感です。

先生のモットーは「治療の根本は、自然治癒力を助長し、強化することにある」です。
ですから、解熱剤や鎮痛剤を使ったことがありません。
これらを使うと、治りが遅くなるからです。

「 今やガンは2人に一人がかかり、3人に一人は死ぬ病気です」と言われていますが、ガンは老化現象ですから、高齢化が進めば進むほど、ガンで死ぬ人が増えるのはあたりまえです。
超高齢化社会では、全員がガンで死んでも不思議ではないのです。

よく、ガン検診で見つかったら手遅れだったと聞きます。
ガンが痛いなら、どうしてそんなになるまで気がつかなかったのでしょうか?
なんとなく感じていても、病院に駆け込むほどではなかったのでしょうね。

長生きも結構ですが、どんな状態で生きるかが重要です。
チューブや機械につながれて苦しみながら長生きしたいでしょうか。

「ガンで死ぬんじゃないよ、ガンの治療で死ぬんだよ」と先生はいいます。

・ガンにも老衰死コースがある。

先生も老人ホーム勤務になった当時は、ガンの末期は猛烈に痛むものと思い込んでいました。ですから、末期患者が来たらどうしようかとビビッていました。

しかし、年寄りの手遅れのガンに何例も出会っているうちに、余計な手出しをしなければ痛むことはないとわかってきました。そして、微笑みながら安らかな死を迎える人も多かったそうです。

これまでに70名ほどのガン末期患者を診ましたが、麻薬を使うほど痛んだケースは一例もありませんでした。

本人が高齢で、ほとんどぼけているので、家族の判断で、もう年だからこれ以上痛い苦しい思いをさせたくないとのことで、ほとんど何もしませんでした。

おかげで、ガンを放置した場合、どんな死に方をするかじっくり観察することができました。それで先生は「死ぬのは完全放置のガンに限る」と確信したのです。

私もこの本を読むまでは、老後に病気になったら病院で介護という拷問に会ってからでないと死ねないのだと思っていました。

この超高齢化社会では、、死は普通のことです。出来るだけ、手間もお金もかけず苦しまずに短期間で大往生したいものです。