最近、有名人やバリバリ仕事をしている人の介護体験の本や手記が増えています。タレント大島直也さんのお母様の場合をご紹介します。
独り暮らしの母親にガンが見つかる
ガン治療専門病院のそばのアパートに引っ越す
うつ病になった
デイサービスに通う
在宅の限界を感じて特養に入所
81才で亡くなる。
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[大島直也さん]「孝行を…」番組断り介護
2018年3月18日
タレントで元お笑いコンビ「ドロンズ」の大島直也さん(46)は昨年7月、母のいくよさんを81歳で亡くしました。がんが見つかってから約1年半の間、芸能界の仕事をほとんどせずに介護を続けました。「親孝行をしたかったが、介護がこんなに大変だと思わなかった」と振り返ります。
「介護は話を聞いてくれる人がいないと自滅してしまう。私は兄姉が支えてくれました」
「定期健診に引っかかったので、一緒に病院に行ってほしい」。
2015年12月、母から電話がありました。
母は、04年に父が他界してから、神奈川県の自宅で一人暮らしをしていました。それまで大きな病気をしたことはなかったので、びっくりしました。色々な検査をした結果、16年2月に肺がんと診断されました。ステージ4で、腰骨にも転移していました。
当時は、久しぶりにテレビのレギュラー番組の仕事が決まり、意気込んでいるときでした。しかし、介護が始まると、長時間拘束されたり地方に行ったりする仕事は難しい。兄と姉は遠方にいる。悩みましたが、「母を一人にしたくない」と思い、芸能の仕事は断ることにしました。
大島さんは、がん治療の専門病院に通いやすい所にアパートを借りた。いくよさんと2人で暮らし、介護生活が始まった。
母はもともと社交的で、老人クラブにも参加していました。しかし、引っ越しをしてからは、急に引きこもるようになってしまいました。友人から電話があっても「二度と電話しないで」と言って電話を切ることもありました。買い物も一人では行かず、いつも私が付き添いました。
やがて、身の回りの世話の全てを、自分勝手な思い付きで、私に言いつけるようになりました。イライラが募り、ついきつく当たることもありました。
ある日の朝、「何時に帰ってくるの」と聞かれたので、「遅くなる」と答えました。すると、「帰ってきたら死んでるかもしれないから」と言われました。思わず顔を母に近づけて、「どんな気持ちになるか分かっているのか」とどなり、手で床をたたきました。
「母が心配で自分から始めた同居なのに」と、自己嫌悪に陥ることも度々でした。16年の夏頃に分かったことですが、母はがんになったショックから、反応性うつ病を発症していました。
大島さんは「このままでは2人とも自滅する」と考え、地域包括支援センターに相談に行った。ケアマネジャーからは、デイサービスを利用するように勧められた。
母はデイサービスに行くのを嫌がりましたが、ケアマネジャーから「引きこもってばかりもよくない」と説得されました。実際に通い出すと、結構楽しそうでした。
しかし、腰の痛みがひどくなり、外出もままならなくなりました。自分でできることがどんどん減りました。つたい歩きができなくなり、ハイハイするようにしか移動ができなくなりました。
私がコールセンターのアルバイトから帰ると、ツーンとした 糞尿 の臭いがすることも増えました。おむつをずらしてしまうので、布団の周りが便だらけのことも。片付けをしながらも、「こんな生活がいつまで続くのか」と不安で仕方なかったです。
いくよさんは17年1月、放射線治療のために入院。その後は、自力での生活は困難になり、大島さんは自分だけの介護に限界を感じたという。いくよさんは同年4月、特別養護老人ホーム(特養)に入所した。
特養には正直、暗いイメージがありましたが、そこは、とてもきれいな施設でした。さみしくないようにと、花を飾ったり父の遺影を置いたりしました。私も2日に1回は会いに行きました。
母は次第に食事ができなくなりました。同年7月には、特養の担当者から「 看取 りと葬儀の準備をした方がいい」と言われました。母の回復を願って会いに行く一方で、「少しでもいい形で送り出したい」と葬儀の準備を進める。まるで自分が2人いるような感覚でした。
亡くなる数日前には、特養から連絡を受け、姉も駆けつけました。交代で特養に寝泊まりをし、見守り続けました。最後は、苦しむことなく旅立ちました。介護が終わり、ほっとした気持ちと、もっと色々できたことがあったかもという気持ちがあります。
いまは芸能界の仕事に戻りました。しかし、介護の体験を伝えたい気持ちもあり、介護者の支援活動に参加するようにもなりました。
介護は本当に大変なことですが、介護している人がつぶれてしまったら終わりです。実際に、悲しい事件も耳にします。自分の生活を大切にすることで、人にも優しくなれる気がします。(聞き手・加藤亮)
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20180312-OYTET50102/
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